出っ歯の矯正治療について
「出っ歯」とは、上の前歯や上顎が前に出ていて、横から見たときに口元が前に突き出して見える状態をいいます。正式には「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と呼ばれ、歯並びだけでなく、かみ合わせや横顔のバランスにも影響します。上の歯だけが前に出ているケースもあれば、土台である上顎そのものが前に出ているケースもあり、原因や状態によって治療方法が異なります。まずは、現在の状態がどのタイプに当てはまるかを正しく知ることが、矯正治療の第一歩です。

出っ歯の原因は、一つではありません。多くは次のような原因が組み合わさって起こります。
上の前歯が前方向へ傾いて生えていると、実際の骨格以上に「歯だけが前に出ている」ように見えます。
上顎が大きい、下顎が小さい、もしくは成長のタイミングがずれたことにより、口元が前に出て見える場合があります。
長期間の指しゃぶりや、普段から口が開いてしまうクセ(口呼吸)は、前歯を前方向へ押し出してしまいます。
顎が小さいのに歯が大きいと、歯がきれいに並ぶスペースが足りず、前に押し出されてしまうことがあります。
原因によって治療方法が異なるため、カウンセリングでは必ず「なぜ今の状態になっているのか」を丁寧に確認します。
出っ歯は「見た目が気になる」という理由で相談されることが多いですが、実はお口の健康にも負担がかかります。
前に飛び出した歯は磨き残しが増えやすく、虫歯や歯周病につながりやすくなります。
前歯がしっかり閉じない「開咬」を伴うことがあり、食べ物を噛み切りにくい、発音しづらいなど生活への影響も。
口が閉じにくいことで口呼吸のクセがつき、口の乾燥・口臭・風邪をひきやすいなどの全身的な影響が出ることもあります。
加齢とともに口元の張りが目立ちやすくなり、ほうれい線が深くなるなど、美容面にも変化が出やすくなります。
「気になってはいるけれど生活に支障がないし…」と思っていても、早めに整えることでトラブルを減らすことができます。
出っ歯の矯正で多くの方が期待されるのが、横顔(Eライン)や口元の印象の変化です。
鼻先・上唇・あごを結んだ「Eライン」に対して口元が出ていると、横顔がもたついて見えます。矯正で前歯の位置や角度を整えることで、自然なラインに近づけることができます。
歯が前に出ていることで「上下の口元が丸ごと前に出ている」ように見える状態を口ゴボと呼びます。原因が歯並びにある場合、矯正で改善が期待できます。
前歯の角度が整うことで歯ぐきが見えにくくなったり、笑顔のバランスが整ったりするため、写真写りで大きな違いを感じる方も。ただし、骨格が強く関係している場合は、矯正だけで変化しにくいケースもあります。ご自身がどのタイプに当てはまるか、まずは精密検査で確認することが大切です。
出っ歯の原因や程度によって、適した治療方法は異なります。
細かい歯の動きに対応でき、出っ歯の改善でもっとも活用されている方法です。強い前突感や骨格の影響があるケースでも対応しやすいため、適応範囲が広いのが特徴です。

透明で見えにくく、取り外しできることから、20〜40代女性に人気の矯正方法です。ただし、歯の移動量が大きい場合はワイヤー矯正が必要になることもあり、「出っ歯がマウスピースだけで治るかどうか」は精密検査で判断します。

前歯だけの軽度な傾きが原因の場合は、部分矯正で改善できることがあります。一方、以下のような場合は部分矯正では十分な効果が得られません。
・上顎と下顎のバランスに問題がある
・奥歯のかみ合わせから整える必要がある
・歯の移動量が大きい
「自分は部分矯正で済むのか?」と気になる方が多いですが、これはかみ合わせの状態を見て初めて判断できるポイントです。
矯正治療は選ぶ方法や必要な歯の動きによって費用が大きく変わります。
部分矯正(前歯のみ):15〜35万円
全体矯正(全部の歯):55〜80万円
※期間や装置の種類により異なります。
マウスピース矯正(インビザラインなど):55〜80万円
ワイヤー矯正(表側):55〜80万円
部分矯正:3〜9ヶ月
軽度の出っ歯:半年〜1年
中等度〜重度:1年半〜3年